なんまんだぶは面白い。
才市さんは、なんまんだぶは、こちらに中(あた)るのだという。
わしが、ねんぶつを、となえるじゃない、
ねんぶつの、ほうから、わしのこころにあたる、ねんぶつ。
なむあみだぶつ
中(あた)るは的中と熟すように、真正面からものにあたるという意味である。
才市さんは念仏は私が称えるのではないという。
念仏の方がわしの心にあたるのだという。
おもしろい表現だが、これこそなんまんだぶである。
中は食中毒と熟すが、まさに毒に中るのであって、自らが毒にあたろうとするのではない。
ねんぶつの、ほうから、わしのこころにあたる、ねんぶつ。
最初のねんぶつの語は阿弥陀さまのねんぶつ。
そして、わしのこころに中ったねんぶつは、なむあみだぶつ。
文字でもなければ言葉でもないねんぶつ。
文字や言葉で顕せない世界から、林遊のこころにあたる、ねんぶつ。
なんまんだぶ、なんまんだぶ
林遊が称えるのではなかったな。
なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ
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