いつでも、どこでも、だれにでも

林遊@なんまんだぶつ Post in 管窺録
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いつでも、どこでも、だれにでも

浄土真宗の救済(救い取って必ず自分と斉しいものにさせるという意)とは、時や場所を選ばず誰にでも届けられている名号である。何時でも何処でも誰にでも届けられて、ただ受け取るだけに仕上げられている名号法である。いわゆる永遠の阿弥陀仏の救いが念仏往生の本願(第十八願)であった。
この救済を、仏の側(永遠の法)の側から表わした言葉が「光明名号摂化十方」(阿弥陀仏は、光明と名号をもって十方の世界のあらゆる衆生を育て導いて下さる)である。この言葉は、『往生礼讃』にある言葉で、阿弥陀仏の救済を阿弥陀仏の側から顕した言葉である。

御開山は、これを『教行証文類』「行文類」で引文され、阿弥陀仏の救済の様相をお示し下さった。(*)『教行証文類』は、難解な書物であるが、何故難解かといえば、仏の側から仏の救済を語っているから難しいのである。仏の語った仏の側での救済の言葉であるから、自らの計らいをまじえずに素直に聞けばよいのである。ほほお、大したもんやなと聞いておけばよいのだが、いかんせん理解しようとするから間違いが始まるのである。
特に自らを真剣な求道者であると思い込んでいる者は、自らのなした修善や真剣さというものによって、阿弥陀仏の光明と名号を撥ねつけているのである。
光は上から照るものであるが、その光に摂せられているにも関わらず、光を求める為にジャンプをするという無駄な努力をする者が多い。まるで、雨が降ってきたから、より雨に近づこうと庭の植木鉢を屋根の上に運ばねばならないという求道主義者の愚行である。

この、「光明名号摂化十方」を、受けいれた衆生の側から言えば上図のように「信心正因」というのである。
往生の業因(衆生を往生させるはたらきの本体)である、南無阿弥陀仏という名号を疑いなく受けいれることを 、衆生の側から表現した言葉が「信心正因」というのである。そもそも浄土真宗の救いとは往生成仏である。『歎異抄』には

「弥陀の誓願不思議にたすけられまゐらせて、往生をばとぐるなりと信じて念仏申さんとおもひたつこころのおこるとき、すなはち摂取不捨の利益にあづけしめたまふなり。」(*)

と、ある。利井鮮妙和上は、この文章は以下のように分節して読んだほうがよろしいと仰せであったそうである。

弥陀の誓願不思議にたすけられまゐらせて、往生をばとぐるなり

と信じて念仏申さんとおもひたつこころのおこるとき、すなはち摂取不捨の利益にあづけしめたまふなり

と信じての、信じる内容が「弥陀の誓願不思議にたすけられまゐらせて、往生をばとぐるなり」であるからである。誓願とはもちろん、なんまんだぶを称えた者(本願をうけいれたもの)を救うという意味である。
浄土真宗の信心とは、奇跡でもなければ凡夫の確信でも、ましてや一時の感情の爆発でもない。百年考えても、死ぬこととしか思えないことを、我が本願を受け容れて我が国に生まれんと欲(おも)え、という本願の言葉を、私には判りませんが阿弥陀さまが仰るならそう思い取らせていただきます、というのが浄土真宗の信である。

阿弥陀仏の救いは永遠であり、光明名号となって、いつでも、どこでも、だれにでも届いているのであり、この救いは時間を超越しているから時間を論じない。
ゆえに、御開山は「行一念釈」では

行にすなはち一念あり、また信に一念あり。行の一念といふは、いはく、称名の遍数について選択易行の至極を顕開す。(*)

と、時間を論じておられない。(行の一念とは、一声のなんまんだぶのこと)
しかし、衆生は有限な時間の中の存在であるからを論じる。永遠の救いが有限な衆生の上に届いたを信の一念というのである。この阿弥陀仏の救いが衆生の上に成立するときを「信心開発」というのである。御開山は信一念釈で

「それ真実の信楽を案ずるに、信楽に一念あり。一念とはこれ信楽開発の時剋の極促を顕し」(*)

と、信の成立するを表現されている。名号が衆生に届いたとき往生は定まるという意味が「信心正因」という言葉である。永遠の救いが有限な衆生の上に開け発った最初の時を一念と言われるのであった。この一念は「初発の義」といわれるように相続していく信の最初を顕し、信心相続の上ではどの時点を取っても、いま、いま、いまの信である。過去や未来を顕すのではなく、常に、今・今・今の、いま、ここに、私の信である。
いつでも、どこでも、だれにでも届いている、光明と名号の救いが、今、ここで、私の上で、なんまんだぶ、なんまんだぶと顕現していることが「信心正因」ということであった。ありがたいことである。いま、ここに、林遊の上に顕現している回向された御信心である。

なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ……

 

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