大海に八種の功徳有り

林遊@なんまんだぶつ Posted in つれづれ
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御開山には一乗海釈をはじめ海のメタファーが多い。
『論註』の影響もあるのであろうが、梯實圓和上著『聖典セミナー 教行信証』「教行巻」(*)p.327~では、晋訳『華厳経』や『十地経論』などを承けてであろうとされている。
と、いうわけでFBで、

弥陀智願の広海に
凡夫善悪の心水も
帰入しぬればすなはちに
大悲心とぞ転ずなる

という和讃を見かけたので『十地経論』の該当部分をネット上の「国訳」から引用してみる。

論曰。是中難度能度大果功徳者。因果相順故。
論に曰く、是の中に度し難きを能く度する大果の功徳とは因果相順する故なり。

十地如大海難度能度。得大菩提果故。
十地は大海の如し、度し難きを能く度して大菩提の果を得るが故なり。

大海有八種功徳應知。
大海に八種の功徳有り、應に知るべし。

一易入功徳。如經漸次深故。
一には易入の功徳、經にいへるが如く、漸次に深しとの故に。

二淨功徳。如經不受死屍故。
二には淨の功徳、經にいへるが如く、死屍を受けずとの故に。

三平等功徳。如經餘水失本名故。
三には平等の功徳、經にいへるが如く、餘水は本名を失ふとの故に。

四護功徳。如經同一味故。
四には護の功徳、經にいへるが如く同一味との故に。

五利益功徳。如經無量寶聚故。
五には利益の功徳、經にいへるが如く無量の寶聚との故に。

六不竭功徳。謂深廣等。如經甚深難度故。廣大無量故。
六には不竭の功徳、謂ゆる深廣等なり。經にいへるが如く甚深にして度り難しとの故に、廣大にして無量なりとの故に。

七住處功徳。以大衆生依住故。如經多有大身衆生依住故。
七に住處の功徳。大衆生の依住なるを以ての故に、經にいへるが如く、多く大身の衆生有りて依住すとの故に。

八護世間功徳。潮不過時受水無厭。如經潮不過限故。能受一切大雨無有厭足故。
八には護世間の功徳。潮(うしほ)時を過ぎず、水を受けて厭くこと無し、經にいえるが如く、潮限を過ぎずとの故に、能く一切の大雨を受けて厭足有ること無しとの故に。

大海相似法菩薩十地行。亦有十種相應如經。如是佛子菩薩行以十相故。數名菩薩行。無有能壞故。
大海の相似法なる菩薩の十地の行も、また十種の相應有り、經にいへるが如く、是の如く、佛子よ、菩薩の行は十相を以ての故に、數(しばし)菩薩の行と名け、能く壞すること有る無しとの故に。

如是等。
是の如き等なり。 『十地経論』(*)

『華厳経』の該当部分

佛子。譬如大海以十相故。名爲大海。無有能壞。何等爲十。
一漸次深。
二不受死屍。
三餘水失本名。
四一味。
五多寶。
六極深難入。
七廣大無量。
八多大身衆生。
九潮不失時。
十能受一切大雨。無有盈溢。
菩薩地亦如是。 『華厳経』(*)

『教行証』でも『華厳経』を引文されておられるが、こうしてみてみると、やはり御開山は『華厳経』から多くの影響を受けたのであろうと思ふ。『華厳経』は、釈尊の悟りの内容を示しているとされている。その悟りの領域から口に、なんまんだぶと称えられ聞こえることを慶びなさったのであろう。

なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ……