わたくしは、何かを配達しているのだろうか。
おれの期待 高見 順
徹夜の仕事を終えて
外へおれが散歩に出ると
ほのぐらい街を
少年がひとり走っていた
ひとりで新聞配達をしているのだ
おれが少年だった頃から
新聞は少年が配達していた
昔のあの少年は今
なにを配達しているだろう
ほのぐらいこの世間で
なにかおれも配達しているつもりで
今日まで生きてきたのだが
人々の心になにかを配達するのが
おれの仕事なのだが
この少年のようにひたむきに
おれはなにを配達しているだろうか
お早う けなげな少年よ
君は確実に配達できるのだ
少年の君はそれを知らないで配達している
知らないから配達できるのか
配達できるときに配達しておくがいい
楽じゃない配達をしている君に
そんなことを言うのは残酷か
おれがそれを自分に言っては
おれはもうなにも配達できないみたいだ
おれもおれなりに配達をつづけたい
おれを待っていてくれる人々に
幸いその配達先は僅かだから
そうだ おれはおれの心を配達しよう
なんまんだぶのご法義は、私に配達された「法」を「遇ひがたくしていま遇ふことを得たり、聞きがたくしてすでに聞くことを得たり」と、「聞くところを慶び、獲るところを嘆ずるなり」(総序 P.132) ご法義である。
そのような意味で、このご法義の越前の門徒は「聞いてよろこぶご法義」と私に配達されたなんまんだぶを慶んでいたのであった。
なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ
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