通夜の赤飯

林遊@なんまんだぶつ Posted in WikiArc編集
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越前では夜伽(通夜)には赤飯を振る舞った。
この赤飯を提供するのは、嫁方の実家が為すべきこととされていた。
もっとも、この赤飯は通常の赤飯と違って少しく色の薄い赤飯であった。この通夜に赤飯を振る舞う風習に関して、地元の新聞に東京の方から、福井(越前)の人間が常識がないといふ投稿があったこともある。
関東の野蛮人は、浄土真宗のご法義が衰退している「地方」であるから、人が死ぬという日本の伝統文化の意義を知らないのだと、新聞を読んだ青年期に思ったものである。
ともあれ、関西では、人が死ぬことを「往生の素懐を遂げる」といふのだが、その往生の素懐を遂げたことを祝って越前では通夜に赤飯を振る舞ったものであった。もっとも遺族の心を忖度して赤飯の色は少しく薄い。

ともあれ浄土真宗では、グリーフ・ケア(別離の悲嘆)を超越する言葉として、無くなった人に対する最上の賛辞が、なんまんだぶという言葉であった。あなたは、もう既に西方仏国の仏さまに成られたのですね、煩悩の憂いの無い仏陀と成られたのですねと、なんまんだぶ、なんまんだぶと讃嘆するのであった。
あんたも、親様の浄土へ往きなさったか、おっつけウラも参らしてもらうで、お浄土で再会しような、と、なんまんだぶを称えるのが「往生の素懐を遂げた」同朋への賛辞であった。それで越前では、「往生の素懐」を遂げた祝いとして、通夜の振る舞いに赤飯を提供するのであった。もっともこの赤飯の風習は、最近寂れているので越前の坊さんがんばれよ、と無責任な在野の門徒であった。

生きることに意味があるように、死ぬることにも意義がある、と説くのが往生浄土の真宗であった。ありがたいこっちゃ。

なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ

同一念仏 無別道故

林遊@なんまんだぶつ Posted in WikiArc編集
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「同一に念仏して別の道なきがゆゑに」

昔は、念仏相続とか称名相続といって、なんまんだぶを相続(自らが称え受け伝えること)に煩かった。幼児のころからナンナン(なんまんだぶを示す幼児語)せぇよといわれたものであった。最近は信心を偏重する法話のせいか、法座の場でも、なんまんだぶを称えると奇異の目で見られることが多い。
しかして、聴聞の達人になればこそ「癖になるほどのお称名」と、なんまんだぶせぇよの念仏相続に煩かったものだ。人生に懊悩してきた深い経験によって、識揚がり神飛ぶ「信心」としての意業を信じていなかったからであろう。
そんなこんなで、WikiArcに追記した『西方指南抄』「四箇条問答」の一説を転載。

問。法蔵菩薩の本願の約束は、十声・一声なり。一称ののちは、法蔵菩薩の因位の本誓に心をかけて、名号おば称すべからざるにや。

答。無沙汰なる人は、かくのごとくおもひて、因位の願を縁じて念仏おも申せは、これをしえたるここちして、願を縁ぜざる時の念仏おば、ものならずおもふて、念仏に善悪をあらするなり。これは無按内のことなり。法蔵菩薩の五劫の思惟は、衆生の意念を本とせば、識揚神飛のゆへ、かなふべからずとおぼしめして、名号を本願と立たまへり。この名号はいかなる乱想の中にも称すべし。称すれば、法蔵菩薩の昔の願に、心をかけむとせざれとも、自然にこれこそ本願よとおぼゆべきは、この名号なり。しかれば、別に因位の本願を縁ぜむと、おもふべきにあらず。(『西方指南抄』四箇条問答p.178)

新井俊一著『西方指南抄』現代語より。

問。法蔵菩薩の本願のお約束は、十声でも一声でも称える者を往生させるというものです。一度名号を称えた後は、法蔵菩薩の因位の本誓に心をかけることが大切で、さらに名号を称えるべきではないのではありませんか。

答。教えを深く理解していない人は、このように思って、因位の願を心に懸けないで申す念仏は往生のためには効果がないと思って、念仏に善い念仏と悪い念仏があるかのように言っています。これは教えを十分に理解していないからです。法蔵菩薩はその五劫の思惟の中で、衆生が心の中で仏を念ずることを基本とすると、意識が落ち着かず心があちこちに飛ぶので往生を遂げられない、と思われて、名号を本願として立てられたのです。

この名号はいかに心が乱れていても、称えることができます。名号を称えると、法蔵菩薩の昔の願に心を懸けようとしなくても、自然に、これこそ本願であったと、と気づかされるのがこの名号です。

従って、念仏する時はことさらに、法蔵菩薩の本願を心に懸けなければならない、と思う必要はありません。

➡「同一念仏」

インフルエンザで熱を出せば、意業としての信心は何処かへ飛んで(識揚神飛)いってしまうのであった。
加齢によって、娑婆の知人より西方仏国へ移住した知り合いが多くなるのだが、「同一念仏 無別道故」と、倶会一処(ともに一処に会することを)得る世界観を持てることは有難いこっちゃな。

なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ